UIデザイン・サービス設計に必携。わかりやすく認知バイアスを網羅できる『自分では気づかない。心の盲点』

2018-05-22

最近どこかで「脳に『やる気』なんて存在しないんですよ」みたいな話を聞いて、学生時代に読んだ池谷裕二氏の本のことをふと思い出した。それで懐かしくなって池谷氏の著書を手繰っていたら、とても役に立つ本に出会ったのでご紹介。

認知バイアス

人間の脳というのは厄介で、だいたいの場合において直感は正しく機能するのだが、特定の条件が揃うとおかしな判断をしてしまうことがある。そんな認知の歪みが「認知バイアス」。

ひとつ例を挙げると、「選択肢は多いほうがユーザーにとって親切に違いない!」という話がある。一見そのとおりなのだが、試しに実験してみると結果は逆になる。6種類のジャムを扱う売り場と24種類の売り場を用意したとき、前者のほうが7倍の売上を叩き出すのだそうだ。

UIデザインやサービス設計をするときは、そのような認知バイアスを理解し、正しく向き合っていくことが重要になる。先の例でいえば、自社サービスの料金プランをたくさん用意して選択肢を増やしても、売上は上がらないということだ。

認知バイアスを網羅。見やすい目次と巻末の用語集で、辞書的な使い方も

本書は、そんな認知バイアスをクイズ形式にして、わかりやすく軽快にまとめている。下の写真のとおり、目次には認知バイアスの名称が並んでいるので見やすい。

ピグマリオン効果、おとり効果、ラベリング理論、自己奉仕バイアス、バンドワゴン効果、確証バイアス、認知的不協和、…。どこかで聞いたことのある現象からはじめて知るものまで、総計80個の認知バイアスを解説してくれている。

巻末には『認知バイアス用語集225』もついているので、辞書的な使いかたもできる。圧倒的に便利なのでは…?

出典・参考文献が明示されていて素晴らしい

さらに素晴らしいのが、それぞれの効果やデータを示す際、きちんと出典元や参考文献を載せてくれていること。

こういった人間の心理を扱う本では、現象の名前と概要だけ紹介しておいて、その情報がどこからきたのか・どこまで根拠が示されているのかが怪しく、オカルトに足を突っ込みかける…というのがありがち。

本書ではひとつずつ、きちんと論拠を示してくれているので、疑問に思ったら原典をあたることもできる。こういった丁寧で誠実な姿勢が、著者と本書の信頼度をぐっと上げてくれている。

すっと頭に入る日本語

なんかもうべた褒めで書いている自分が気持ち悪いのだが、池谷氏の著書は興味深いテーマであることはもちろん、日本語がすっと頭に入ってくる。とても平易に、優しく説明してくれるのだ。

学生時代にはじめて読んだ氏の著書が『海馬―脳は疲れない』だったのだが、やはりとても読みやすかったことを覚えている。

自分もこうしてわずかながら文章を書くのでわかるのだが、読みやすい文章を書くというのはとてつもなく大変な作業で、このレベルまで読みやすくするには相当の労力がかかっているはずである。尊さを感じずにはいられない…。

UIデザイン・サービス設計をする人はぜひ

感動のあまり、購入した当日に読みふけり、そのまま勢いでレビューを書いてしまった。

UIデザイン・サービス設計をする人にはぴったりだろうし、そうでなくても人間の心理というものはとてもおもしろい。誰にでも楽しめるよう平易に書かれているので、興味を持ったらぜひ手にとってみてほしい。

個人的には、ケース8まで読み進めて「やられた…笑」という気持ちを味わっていただきたい…!

書いている人:cocopon

Developer/Designer. Web/iOSなどのフロントエンドを主軸に、UIデザインから開発全般まで手がける。

趣味が高じて、ドット絵やジェネラティブアートが仕事になりつつある。