「デザイナーとして起業した(い)君へ。成功するためのアドバイス」

2013-12-01

…というタイトルの本を知人がお勧めしてくれたので、読んでみた。 この本は、フリーのデザイナーとして生きていくために必要な、偉大な先輩方からのアドバイス集だった。

著者は自分の大好きな「ロゴデザイン・ラブ!」を書いた人

以前の記事で、「ロゴデザイン・ラブ!」という本が、アイコンデザインに行き詰まっていた状況を救ってくれたことについて書いた。

今でもこの本にはお世話になっていて、ロゴデザインに躓いたときには必ず読み返している。

本書は、その「ロゴデザイン・ラブ!」の著者であるDavid Airey氏が書いている。 そして、期待を裏切らない充実した内容だった。

たくさんの先輩デザイナーの成功・失敗体験

本書には、たくさんのデザイナーによる「失敗体験」が、惜しげもなく書かれている。 成功体験ばかり語られている本が多いなかで、他書にはないとても貴重な情報を得ることができる。

例えば、14章-1の「危険信号」では、関わるべきでない危険なクライアントが発する信号について書かれている。 アイディアだけ出させて一銭も支払わないクライアント、横柄な態度で何度も要件をひっくり返すクライアント、…。

最高のパフォーマンスを発揮するためにも、自分にとってプラスとなるプロジェクトを選んでいきたいものだ。

活動の肝は「セルフブランディング」

セルフブランディングが活動の肝となることが、本書の全体を通して伝わってくる。 関連する章がたくさんあることからも、その重要性を感じることができる。

  • 7章: ブランド・ネーミング
  • 8章: 君のブランド・アイデンティティをデザインする
  • 9章: 自宅で仕事するか、それともスタジオを借りるか
  • 10章: ネットで知名度を上げよう
  • 11章: 自分自身を売り込んで、良いクライアントを見つけよう
  • 12章: 会社は大きければいいというものではない

その中でひとつ、著者の失敗談として「屋号の決定」に関する話が出てくる。 プロフェッショナル集団の雰囲気を目指して「New Dawn Graphics」と一度は名乗ったものの、徐々に違和感を覚えていき、最終的には自身の名前を屋号とした…というもの。 これがとても印象的だった。

僕が独立したときにおかした大きな間違いの一つは、最初のビジネスネームを選んだ2005年に起きた。 (p.96「ブランド・ネーミング」より)

2005年の僕は、自分をデザイン代理店の経営者のように見せたがっていた。…(中略)なんて馬鹿だったんだろう。 (p.182「会社は大きければいいというものではない」より)

というのも、自分がバッチリこの状況に当てはまり、そして同様に後悔しているからだ。

自分も数年前に「DOTAPON Software」という屋号のようなものを設けて、身の丈に合わない組織感を出そうとしていた。 「よいものだけを生み出すプロフェッショナルな集団」への憧れがあったからだ。

しかし著者と同様、時間が経つにつれ、この名前に違和感を覚えはじめた。 個人としての考えや勉強会への参加記録など、自分にとっての大事な活動が、公式感を醸し出しているサイトのブログで書きづらくなってしまったのである。

自分のサイトなのに、自分が100%表現できない。これはよくないと感じた。

現在は、個人のハンドルネームを冠するこのサイトで、せっせと情報を残している。 自分の活動・知見を自分自身と結びつけて、どういう人間か知ってもらうために。 うまくいくかはまだ分からないけど、偶然にも著者の歩んだ道と一致する、自分なりのブランディングだ。

デザイナーの役割は、ひとりで正解を出すことではない

まだまだ未熟ではあるが、デザイナーとして関わるプロジェクトもいくつか経験してきた。 行き詰まったときによくあるのが、相手からデザインの助け舟を出されて、しかもその案がより優れているということ。 「デザインの専門家として参加しているのに、専門知識のない相手に優れたアイディアを出されてしまうなんて…」 このような状況では、デザイナーとしてどう振る舞うべきだろうか?

これまでの自分を振り返ると、自身のデザイナーとしての未熟さを責めてしまうか、あるいは相手の意見を受け入れまいとあら探しをしてしまっていたように思う。 しかし、これは賢いやり方とは言えないだろう。

そんな自分を救ってくれたのが、このアドバイスだ:

デザイナーはアーティストではありません。創造性は、デザイナーがクライアントに提供できる価値の一部に過ぎません。 (p.288「最高のプレゼン方法」より)

ときには、デザイナーではない相手のアイディアのほうが優れていることもある。まずはこれを認めよう。 デザイナーの役割は、ひとりで正解を出すことではない。クライアントとのやりとりを通じて相乗効果を発揮し、最終的にベストな結果を導くことだ。

みんなの悩み、仕事の価格設定 価格設定は何度か経験しているが、さじ加減が本当にわからない。 みんなどうやって決めているんだろうか?自分の価値に自信を持って、相応の額をドーンと提示できている?そもそも、相応の額ってなんだろう?

16章「仕事の価格を設定する」では、この疑問に答えてくれる。 結論から言うと、プロでさえ頭を悩ませている。

この章に明確な答えは載っていない。 ただし、適切な価格を探っていくための方法について、たくさんのデザイナーが実体験に基づくアドバイスを語ってくれている。

詳細は本書に載っているのでそちらを参照してほしいが、自分の価値を安売りするようなことだけはやめよう。後々になって自分の首を絞めることになる。反省。

クリエイティビティを維持するために 20章のタイトルは、「クライアント抜きの将来のために」。 クライアントのある仕事ももちろん楽しいが、それがすべてを占めてしまうのはよろしくない。 そのときのプロジェクトに調子が大きく左右されてしまうし、心の余裕もなくなってしまう。

著者は「自動的に副収入が入る仕組みを構築しておくべきだ」とアドバイスしている。 精神の平穏を保ち、よりよいクリエイティビティを発揮するために、安定した収入源を別に確保しておく必要がある。 これについては自分も試行錯誤しているが、なかなか軌道に乗らない。はやく立ち上げなければ…。

先輩方の実体験に基づくアドバイスに耳を傾けてみよう ここまで書いてきたように、著者や知人のデザイナーの実体験が、これでもかというボリュームで盛り込まれている良書だった。

偉大な先輩方のアドバイスに耳を傾けてみよう。いつか同じ舞台で、活躍できるようになるために。