念願のフルサイズ一眼カメラを入手したが、最初のレンズに悩んでいる。
はじめて一眼カメラを手にしたのは2012年のこと。当時購入したのがNEX-6で、フルサイズよりもひとまわり小さなAPS-Cセンサーを搭載したモデルだった。
一眼カメラの写し出すとろけるような「ぼけ」に漠然と憧れていたのだが、暗めのキットレンズではそのような画が出るはずもなく、でも当時の自分は何もわからなくて「APS-Cってこんなもんなのか…」と肩を落としていた。
1年後の2013年。Appleの開発者向けイベント「WWDC」への参加が決まったことで転機が訪れる。はじめての海外旅行だし、ここらでレンズを買い足してもよいだろうと手にしたのが35mm F1.8 OSSという単焦点レンズだった。
F1.8という明るいぼけの世界、そして35mm(フルサイズ換算52.5mm)という主題を切り出す画角が気持ちよく、撮るのがとても楽しくなった。
そこから今日に至るまでの11年、このレンズは自分の人生の節々を美しく記録してくれた。世間の評価は知らないが、自分にとっては間違いなく神レンズだ。
最新のテクノロジーを駆使する機器にあって、10年経つとボディもさすがに衰えを感じずにはいられない。いまとなっては画素数は少ないしAFは遅いし、動画なんて撮れたものではない。
最近はグッズを作ってイベントで販売するような仕事もしており、そろそろちゃんと小物や動画が撮れる機材がほしいよねということで、憧れのフルサイズ機を導入することにした。
正直なところ、APS-C機を手にしてからずっと、フルサイズに対するコンプレックスを抱えながら生きてきた。
明るい単焦点レンズのぼけで満足していたし、写真を大きく印刷する機会もなく、用途に対してAPS-Cの限界を感じる場面はそう多くはなかった。とはいえ、フルサイズだったらもっといい画が撮れたかもしれないという未知の可能性は、常に頭の片隅へ影を落としていた。
今回、本体として選んだのはα7C II。携帯性を重視したかったことに加え、既存のAPS-C用レンズが使える点も魅力だった。すべての性能が格段に向上したが、特に驚いたのがAF性能だ。前の機種では少し絞ってF2.8くらいが実用的だったのだが、ばちっとピントが合うのでF1.8開放で常用できるようになった。
さて、悩ましいのがレンズ選びだ。気軽に買い足せる価格のものではないので、最初の1本は慎重に検討せねばなるまい。APS-C時代に愛用したレンズと近い、50mm F1.8程度の明るい単焦点にしようと思っているが、選択肢が無限にあって困る。
実は、ここに至るまでもう1本だけAPS-C用のレンズを購入しており、それがSIGMAの18-50mm F2.8 DC DNだった。
これまで35mmの単焦点をF2.8で運用してきたので、この通しF2.8ズームレンズ1本ですべてをカバーできるな、単焦点は不要になってしまうかな…なんて心配していたのだが、単焦点と同じ35mm F2.8で撮ってみてもなんだか写りが違う。知識が足りずうまく言語化できないのが残念だが、スペックには表れない差がそこに顕在しており、けっきょく単焦点に戻ってきてしまった…という経験がある。
スペック表に気を取られすぎず、作例をたくさん眺めてビビッとくるレンズを選びたい。