タイトルから「稼げる」系の雰囲気を感じて少し警戒してしまいましたが、まったく違いました。ゴメンナサイ。 趣味でiOSアプリ開発をしている視点から、この本を読んでみました。
この本のはじめに、こんな問いがあります。
「あなたは何を持ってヒットと捉えますか?」
たくさんの人に喜んでもらえること? たくさんお金を手に入れること?
目的こそ様々ですが、共通しているのは「何らかの対価がほしい」ということです。 「たくさんの人に喜んでもらえる」 = 利用者のハッピー、「たくさんお金を手に入れる」 = 売り上げ、といった具合です。
アプリをつくるには、自分のリソース(時間)を消費します。 その結果、対価が得られればモチベーションが向上し、次のバージョンに注力できます。 しかし、充分な対価が得られなければ…そのうち投げ出してしまうでしょう。
アプリを長く継続させていくこと、つまり「育てる」こととは、「アプリをつくる→対価が得られる→もっとがんばる→対価が得られる→…」というサイクルを、上手に回していくことなのです。
この本では、限られたリソースを正しい方向につぎ込んで、アプリを長く育てていくためのTipsが詰め込まれています。
長く育てるアプリをつくるには、企画から設計→リリース→運用まで、すべての工程での配慮が欠かせません。 この本では、開発者登録からはじまるすべての工程が丁寧にカバーされています。
好印象だったのが、ユーザに愛されるアプリには欠かせない、ターゲットユーザの絞り込みやUXをきっちりと解説している点。 自分のアプリで実践済みのことや共感できることもたくさんあり、頷きながら読み進めました。
「広告収益」と「課金システム」は、それぞれ独立した章として構成されていて、力が入っている印象を受けます。 用語の解説から各方式の試算まで丁寧に解説してくれるので、広告もアプリ内課金も触ったことのない自分のような開発者でも、その世界の雰囲気を掴むことができました。
7章「開発・受発注」には、なんと見積もり書の書き方と注意点まで載っていました。 「俺、こんな会社辞めてフリーランスになるんだ…」というとき役立つに違いありません。メモメモメモメモ。
話がやや拡散してしまいましたが、それだけ広い工程をカバーしているTips集なのです。
最後のTips『おわりに〜「真にヒットするアプリ」とは』の段落を引用して締めることにします。
本書はヒットするアプリを作り、そして育てていくための本ですが、真にヒットするアプリとは、人々から愛され、世界を少しだけでも良くしていくものなのかもしれません。常に生活をともにするデバイスだからこそ、私達も人々の生活に寄り添ったアプリを作って行きたいものです。
自分の愛情を注ぎ込む価値のあるアプリが、たくさんの人に愛されることで、さらに良いものになっていく。このサイクルを維持することが、真にヒットするアプリへの道なのだ。 がんばろう。