ずいぶん間が空いてしまいました。前回は、苦しみながらもLluminoのアイコンを完成させたお話でした。 今回は、Lluminoで使っているフォントについてお話します。
フォントって、パソコンを買うと既にたくさん入っています。 その中から選ぶもよし、フリーのものをダウンロードして使うのもよし。
でも、有料のフォントは格が違います。
例えば、ずっと自分が狙っている「Neue Frutiger」。 空港など、視認性が求められる用途で設計された書体をオリジナルとした、見やすさ重視のフォントです。
1つのウェイト(太さ)で、およそ1万円。 ぜんぶ揃っているComplete Packは…35万円!うぁああ!
でも、無意味に高いわけではありません。 ある書体デザイナーによる書籍が、その価値を教えてくれました。
もう2年も前のことです。 デザインへの興味の延長で、軽い気持ちでフォントの本に手を伸ばしました。
電車のお供にフォントの本読んでるんだけど、すごくおもしろい。有名フォントができるまでの過程を集めた本ないかなー
— cocopon (@cocopon) January 22, 2011
この本が大当たりで、本当におもしろい。
書体デザイナーの小林章氏が、優しく、わかりやすく、丁寧に、フォントを解説してくれます。
専門的な話はほとんど出てきません。 日常風景にとけ込んでいるフォントの、歴史やちょっとした面白話がたくさん入っています。
「”X” という文字を描いてください」と言われたら?
普通なら「線を2つ重ねて一丁上がり!」ですが、ホンモノのフォントは少し違います。 例えば、幾何学的な形が特徴のフォント「Futura」の “X” を見てみましょう。
ピンク色の部分が、本来のまっすぐな線です。ちょっとずれていますね。
なぜずれているのか? それは、目の錯覚を抑えるために微調整されているからです。
本当のまっすぐは、まっすぐに見えない。
すべてのアルファベットについて、このレベルの微調整が施されているのです。 それはもう、気が遠くなるほど時間のかかる作業でしょう。
あぁ、普段何気なく使っているフォントって、膨大な手間と時間がかかった「デザイナーの魂の結晶」なんだ。 …と、この本を読み終わって気づきました。
先のNeue Frutigerのこだわりようも、ページ半分ほどの巨大な文字を添えて解説されています。
Frutiger(フルティガー)と比べると、Neue Frutigerはカーブのなめらかさが違うでしょ?(中略)何度も打ち合わせとダメ出しをして、ほんとに時間かけてます。「ちゃんとつくってますから」って胸を張れるように。 (p.163: 「Neue Frutigerのキレイなカーブ」より)
か、カッコイイ! Neue Frutiger、いつか手に入れたい。
話をもとに戻しましょう。
Lluminoで意識的に使っているフォントは、主に2つです。
アプリ内、主に電卓画面で使用しているのは、Trebuchet MSというフォントです。 数字が映えるこのフォント、電卓との相性は抜群です。
クールな全画面ストップウォッチ「BigStopWatch」で使っているのを、制作者に教えてもらったのがきっかけです。
過去の紹介記事で、フォントの由来などについて詳しく触れています。 興味のある方はこちらへどうぞ。
Avenir Nextは、すっきりした形が特徴のサンセリフ体。
Macをお使いの場合は、AvenirとAvenir Nextは最初から含まれています。やったね!
自分が使っているのは、Avenir Next LT Proの細い書体です。 セールをしているときに購入しました。
Avenir Next、3つセットでセール中らしい。イイナァ… http://t.co/UvrqiIGI
— cocopon (@cocopon) September 27, 2012
今月の予算で買おうと思っていた圧力鍋は、Avenir Nextとなりました。憧れのブロック肉ビーフシチューへの道のりは険しい…
— cocopon (@cocopon) September 27, 2012
「LT」はLinotypeの略でファウンドリー(= つくった会社)の名前、「Pro」は含まれている文字の種類が多いということ。
(参考: フォントがもっと分かる!欧文フォントの名前に付いているアレの正体とは?)
スッキリしたイメージが、Lluminoのイメージとぴったりなんですよね。 細めのウェイトで文字を大きくすると、カッコよく仕上がるのでお気に入り。
…と、このテクも「フォントのふしぎ」に教わったんですけどね 😉
ウェイトの使い分けもけっこう大事です。最近の傾向は、大きく使われる文字で、けっこう細身のウェイトが多いこと。 (p.114: 「ボールドとかライトって?」より)
あとで気がついたのですが、今回採用したAvenir Nextは、先の「フォントのふしぎ」の著者でもある小林氏が手がけたフォントでした。 不思議な縁もあるもんだ…と思いつつ、ちょっとうれしくなりました。
さて、長いこと続けてきたLluminoを語るシリーズも、次回が最後の予定です。
つづく。